CraftGene Craft_vol.0

旅、人、ものづくり。いい旅には、きっといい出会いがつきものです。職人との出会い、街を歩く楽しみ——。伝統工芸をはじめとした「ものづくり」をテーマにした特集記事を通して、日本各地を旅してみませんか?


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KESENNUMA3CraftGene気仙沼の気概「蒼天伝」さて、蔵元だ。おじゃまさせていただいたのは、株式会社男山本店。1912年の創業から続く「伏見男山」や、いわゆるプレミアム地酒「蒼天伝(そうてんでん)」をつくっている蔵元だ。地元の気仙沼や仙台で昔から親しまれている「男山」、それに加えてより気仙沼らしくを意識し、日本と世界の酒飲みに「気仙沼の酒」を伝えようという気概を込めた銘柄「蒼天伝」。たしかに、東京で見かける機会が多いのは「蒼天伝」かもしれない。男山本店があるのは気仙沼駅から2キロ弱、港から高台に向かって少し歩いて5分ほど。そこで「へー」と思ってしまったのは、日本酒の酒蔵ってなんとなく山奥にあるイメージが染み込んでいたからかもしれない。でも、考えてみれば、海沿いの酒蔵だって珍しくはなかった。あの酒とかあの酒とか――。親しみを感じる工場小高い山をバックに建つ男山本店は、煙突と壁にドシンと書かれた「伏見男山」の文字が目印。日本酒を仕込んでいると思われる建物の向かいには、お酒を運ぶ6本入りのケースと大量のビンが並ぶ建物が見えた。最初に案内していただいた営業の加藤勇一さんに聞くと、ここは瓶詰め工場なんです」と。出来立てのお酒がここで一升瓶や四合瓶に詰められ、ケースに入れられて各地へ向かうわけだ。そっか、酒蔵って酒をつくるだけじゃないんだよな。酒を詰めなきゃ、出荷できないもんな。それにしても。なんかいいなあ、この規模感。一部が1階から2階まで吹き抜けになった工場棟と、それにつながるこじんまりとした事務所棟。伝統工芸もいろいろだけど、これまで『CraftGene』の準備のために巡った職人さんは1人で工房を構える人が多かった中で、格段に工業的で、しっかりガッシリした設備を持った工場だ。そこでは日本酒を仕込んだり瓶詰したりする人、蒼天伝」や「男山」を持って日本中を駆け巡る加藤さんのような営業マン、またそれを支える事務の人、大勢の方がここで仕事をしているはず。ただ、お世辞にも大規模な工場ではない。いや、「大規模」という言葉が似合わない雰囲気というか。なんて言えばいいのか。失礼な言い方かもしれないけど、田舎の親戚一同が全員集まったらこうなっちゃった、そんなふうな蔵にも見える。そこにたたずむ機械からさえ、なにか親密さがにじみ出ているような、ほのぼのと温かな工場。不思議だな。工場の入口に立ってるだけで、なんでこんなに和んでるんだろう。もちろん、ここは真剣勝負の仕事の場で、癒しの場でないんだけど、ね。杜氏さん直々に案内いよいよ蔵元見学が始まる。案内していただくのは、杜氏の柏大輔さん。杜氏さん直々に案内していただけるんだ。すごいな。工場は、日本酒づくりの流れそのままに設備が配置されており、酒づくりは酒米を精米し、洗い、蒸すところから始まる。柏さんの説明は実際の作業とそれに必要な設備を見ながら進み、なにより分かりやすかったのが工場見学用に作られたオリジナルのパネルを手に説明してくださるところ。


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