CraftGene Craft_vol.0

旅、人、ものづくり。いい旅には、きっといい出会いがつきものです。職人との出会い、街を歩く楽しみ——。伝統工芸をはじめとした「ものづくり」をテーマにした特集記事を通して、日本各地を旅してみませんか?


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KESENNUMA2CraftGene⑤一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。日本人の生活に密着し、日常生活で使用されるもの。(注)具体的には、100年以上の歴史を有していること。???やっぱり、おかしい…。蔵元を見学させてもらって強く感じたのは「日本酒が伝統工芸じゃなければ、なにが伝統工芸なんだろう?」と。日本酒は、いや焼酎も、なんで伝統工芸に認められてないんだろう?他の伝統工芸と比べて、どの要素が欠けてるんだろう?酒に限らず、伝統工芸を追っているとそんな疑問がちょいちょい湧き出るから、ここで大事にしたいのは「自分の中の伝統工芸」。誰に文句を言われても、それを大事にしようと決めた。もう決めちゃったのだ。“みちのく感”溢れる気仙沼へさて、気仙沼へ。気仙沼といえば三陸、宮城県。宮城といっても仙台なら感覚的に東京からものすごく近い。新幹線に乗れば90分で名古屋と同じぐらいで、フラっと日帰りできる距離感。ただ、行き先が気仙沼となると、状況はちょっと変わる。実際、東京から最速の新幹線を使っても一関で乗り継いで約4時間、多くの場合はたっぷり5時間。と聞いて、あなたは「遠いなあ」とため息をつきますか?それとも「なんか惹かれるわあ」と遠い目になりますか?自分は圧倒的に惹かれる側で、ふらっと行けない分、それなりに心の準備というか、行くぞ”という気合いと計画が必要になり、旅に出るテンションになる。今回の気仙沼であれば、より“みちのく感”が高まる。旅はやっぱり、準備している時、行先を思って妄想している時が一番楽しいから。陸が三つで三陸?今回、あらためて気仙沼へ行くにあたり、ふと思ったのが、三陸という地名。曖昧に抱いていた地理感では、宮城の松島あたりから岩手の釜石や久慈あたりまでを三陸って言うのかな?そういえば、三陸の地名の由来を知らなかったな。【三陸】宮城県、岩手県、青森県の3県にまたがる三陸海岸と、その内陸部の北上高地を含めた地域。三陸とは陸前国、陸中国、陸奥国の3国の総称。コトバンク(ブリタニカ国際大百科事典小項目事典の解説)よりあぁ、なるほど。陸前、陸中、陸奥、その陸が三つで三陸なんだ。そして八戸までを三陸って言うんだ。知らなかった。実は今回、気仙沼へは拠点にしている東京からでなく、わけあって九州から向かった。というのも、気仙沼に行くのと同じ時期に佐賀の唐津焼の作家、岸田匡啓(まさひろ)さんの「鳥巣祭り」があり、これはここ3年ほど毎年おじゃまして、個人的に毎度のように優しい気持ちになれるので、今や欠かせない場所と機会になっているのだ。というわけで福岡から一気に仙台空港へジェット機で飛び、そこから列車を乗り継いで気仙沼へジワジワと進む旅になった。そして結果的にこの行程は、たびたび「おっ!」という悦びを感じる、静かに楽しい道のりだった。まず興奮したのが福岡から仙台への航路。九州から西日本を抜けると金沢から新潟へと日本海の沿岸を北上し、そこから福島を横断して仙台に出るルートで、東京発着の太平洋側から見る景色とはまったく違う。西日本の穏やかで優しい山並みから、北陸に入ると白山や立山の急峻な峰となり、新潟上空からは日本アルプスや越後山脈の向こうにちょこんと見える富士山でクライマックスと、たった1時間ちょっとの間に“日本の山並みオールスター”的な景色を空から満喫できる。片や地上に下りた仙台からはのんびりトコトコルートだ。仙台空港駅から東北本線の鈍行で収穫の終わった田んぼの中を一関まで向かい、待っていた大船渡線はほのぼのとした2両編成のディーゼルカー。ボックスシートに座ると車窓から入る陽光が柔らかい。ディーゼルカーはタフで実直そうなエンジンをうんうん唸らせながら、北上山地を越えて海沿いの気仙沼に入っていく。空から陸から、秋の終わり、または冬の始まりのような日差しのなか、日本の背骨とみちのく三陸の景色をたっぷり味わえる贅沢ルートなのだった。よかった、いつもとちょっと違うことをやってみて。TOHOKUSANRIKU夕方の凪いだ海を、気仙沼港と大島を結ぶフェリーがやってきた。大島までは約25分の船旅。一関駅からは、いかにも実直でよく働きそうなこのディーゼルカーでガラガラと進んでいく。


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